戯曲乱読(1) テネシー・ウィリアムズ「ガラスの動物園」

四方田です。

 

著名な戯曲作家さんのお話を聞く機会があり、「良い戯曲を書きたいならもっと戯曲を読むべき」と言われてて、そりゃあそうだなと。でも、そんなに読んでないな。と思い、選り好みせず、手に取りやすいものから読んで見ようと思い、読むことにする。

戯曲がいいな、と再確認した点は上演を前提としているのでページ数が極端に多い作品は少なく1冊読むのにかかる時間が極端にはかわらないということと。公演を観に行くよりいろいろ安くすむこと(特に古典の類)。

 

その一冊目、

 

テネシー・ウィリアムズ「ガラスの動物園」

             

登場人物 4人(女2 男2)。

テネシー・ウィリアムズの自伝的といわれる戯曲。登場人物は4人だけ、しかも1人はかなり後半に登場。

母、姉、弟(主人公)の親子の話。タイトルがいい。「僕たちの時代」とか「憧憬」とかでも行けそうなところを「ガラスの動物園」だもの。

タイトルは良く目にするものの舞台で観た事はない。想像してたストーリーとは結構違った。もっと抽象的な話かと思ってた。冒頭の文章でこの戯曲は自由に演出すべきだというような事を言う割に舞台美術やらスクリーンの活用など結構指示が細かいT・ウィリアムズである。

自分の青春時代の価値観で子どもらの幸福を願い、それがもう通用しないために衝突する親子。裕福な時代を育った母と不況で不本意な状況のその子ども、という設定は現代に通ずるものがあり、また、母への意見の通じなさ、価値観を変えない頑固さ、子どもたちが折れるか逃げるかすることで議論が終わるようなある種の「お母さんあるある」がリアル。作家の母がモデルなのだろう、と思わせる。話の流れはシンプルなのでストーリーを追いやすく、感情移入もしやすいのではと思う。舞台が整ってからの後半の展開がいい。一時の幸福感と現実ってそううまくは行かないよねという終わり方。日常の市井の一家の話ではあるものの華のある(知名度のある)役者が演じるのを観てみたいとも思う。